研究紹介
木材工学研究室では、土木分野での木材利用をテーマに、現代のニーズに合った新しい構造形式の開発や すべての木構造物に適切なメンテナンスが施される維持管理体制の構築に関する研究を行っています。
-
雪荷重の軽減を目的とした床版開閉式木橋の開発(秋田県立大学野田准教授、秋田大学後藤教授、㈱ウッディさんないと共同で開発)

木橋は、自然との調和や景観への配慮、部材の運搬のしやすさといった利点から、登山道や自然公園などに多く利用されています。しかし、豪雪地帯では冬季の積雪による雪荷重が原因で、橋が落下する事故が発生しています。
たとえば、積雪深が3~4mに達する地域では、雪の荷重(1m³あたり約3.5kN)が歩行者荷重(活荷重)の3~4倍にもなることがあり、構造に大きな負担がかかります。
この課題に対し、私たちは冬季限定で床版を跳ね上げることができる「開閉式床版構造」を提案しました。通常時は通行可能でありながら、積雪期には床版を上げて雪が積もらない状態を保ち、雪荷重を大幅に低減することが可能です。
秋田県内の豪雪地域にて実施した屋外暴露試験では、この構造によって雪荷重を約50%削減できることが確認されました。
携帯デバイス(スマートフォン、タブレット端末)を用いた木橋の振動特性調査

現在、老朽化する橋梁が増える一方で、点検・劣化診断を行える技術者が不足している現状にあります。
木橋は、景観性や環境面への配慮、運搬性などから山の中の登山道などに
多く架けられているます。
そのため、足場や高所作業車を搬入することが難しい場合も多く、
通常の近接目視試験や打音試験などが行えない場所も多いです。
一方で、固有振動数と曲げ剛性の関係に着目して、橋梁の固有振動数を振動試験から
測定することで、橋梁全体の曲げ剛性を確認し劣化状態を把握する方法は、
床版の上だけで測定が完了するため、足場などを必要としないため、簡易的な測定として有用です。
しかし、従来の測定方法では、加速度センサーやデータロガーが高価で、またデータを記録するための機材も
多数必要となるため山の中の測定には不向きな点も多くありました。
そこで、着目したのがほとんどの人が扱ったことがあるスマートフォンなどの携帯デバイスに内蔵されている加速度センサー
をセンサーです。従来の機器の代替とすることで、測定から記録まで全てが行えるため誰でも手軽に測定が行えます。
また安価なものも多数あるため、導入コストが抑えられます。
携帯デバイスとAIを用いた自動劣化探知システムの開発

木材は鋼材やコンクリートと異なる劣化形状となることで、測定者による点検・診断結果に差が生じてしまう という問題があります。そこで、本研究では携帯デバイスによって測定された加速度波形から AIによる自動判定を行い、劣化位置の推定や劣化状態の推定などを行います。
トップへ戻る