研究紹介
木材工学研究室では、土木分野での木材利用をテーマに、現代のニーズに合った新しい構造形式の開発や、木構造物に適切なメンテナンスが施される維持管理体制の構築に関する研究を行っています。
雪荷重の軽減を目的とした床版開閉式木橋の開発
秋田県立大学、秋田大学、株式会社ウッディさんないとの共同研究として、豪雪地帯における木橋の雪荷重低減を目的とした床版開閉式木橋の開発に取り組んでいます。
木橋は、自然との調和や景観への配慮、部材の運搬のしやすさといった利点から、登山道や自然公園などに多く利用されています。しかし、豪雪地帯では冬季の積雪による雪荷重が原因で、橋が落下する事故が発生しています。
この課題に対し、冬季限定で床版を跳ね上げることができる「開閉式床版構造」を提案しました。通常時は通行可能でありながら、積雪期には床版を上げて雪が積もらない状態を保ち、雪荷重を大幅に低減することが可能です。
秋田県内の豪雪地域で実施した屋外暴露試験では、この構造によって雪荷重を約50%削減できることが確認されました。
携帯デバイスを用いた木橋の振動特性調査
老朽化する橋梁が増える一方で、点検・劣化診断を行える技術者が不足しています。木橋は山間部や自然公園内に架けられていることも多く、足場や高所作業車を搬入することが難しい場合があります。
そこで本研究では、スマートフォンやタブレット端末に内蔵されている加速度センサーを用いて、木橋の固有振動数や振動特性を簡易に把握する手法を検討しています。床版上で測定が完了するため、現場で導入しやすい点が大きな特徴です。
持続可能なインフラに向けた住民参加型の木橋セルフメンテナンス
木橋を長く使い続けるためには、専門技術者による点検や補修だけでなく、地域住民が日常的に橋に関心を持ち、簡単な維持管理に参加できる仕組みづくりが重要である。
本研究では、地域にある木橋を対象に、住民・学生・行政が連携して、清掃、再塗装、簡易点検などを行う「木橋セルフメンテナンス」の実践に取り組んでいる。木材は紫外線や雨水によって表面劣化が進行するが、定期的な再塗装や早期点検を行うことで、劣化の進行を抑え、橋の長寿命化につなげることができる。
また、セルフメンテナンス活動は、単なる維持管理作業にとどまらず、地域のインフラを自分たちで守る意識を育てる教育的な効果も期待できる。木橋を「地域でつくり、地域で使い、地域で守る」仕組みを構築することで、持続可能な社会インフラの実現を目指している。
住民参加型インフラに向けた木橋整備
本研究では、たなぐら里山板橋キビタキの森を実証フィールドとして、里山で伐採された針葉樹を活用した木橋の架設に取り組んでいる。
本木橋の整備では、専門業者だけに依存するのではなく、地域住民や学生などの非専門技術者が施工に参加できる仕組みを基本としている。木材は、DIYなどでも広く用いられる身近な材料であり、軽量で運搬しやすく、切断・穴あけ・接合などの加工が比較的容易である。そのため、重機を用いにくい里山や農道、自然歩道などの小規模インフラ整備に適している。また、木材は構造材料としても優れた特性を有している。特に繊維方向の強度に優れ、比重に対する強度、すなわち比強度が高いことから、軽量でありながら引張・圧縮の両方に抵抗できる材料である。これらの特徴を活かすことで、地域材を用いた小規模木橋を、地域の人々の手で整備することが可能となる。
本研究は、木橋を「専門家だけがつくるインフラ」ではなく、地域でつくり、地域で使い、地域で守るインフラとして位置づけ、持続可能な里山インフラ整備の実現を目指すものである。
携帯デバイスとAIを用いた自動劣化探知システムの開発
木材は鋼材やコンクリートとは異なる劣化形態を示すため、点検者によって診断結果に差が生じる場合があります。
本研究では、携帯デバイスによって測定された加速度波形からAIによる自動判定を行い、劣化位置の推定や劣化状態の推定を行うシステムの構築を目指しています。