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人工湿地とは?

水や大気を清浄化する自然の浄化作用は,重要な生態系のサービスのひとつである。 自然の作用は持続的であり,そのような自然の機能をうまく活用することが持続的な低炭素社会を実現するために不可欠であるといえる。 人工湿地は,自然の湿地とは桁違いの水質浄化能力を付加することに成功した半自然的な汚水処理システムである。 その技術革新により,人工的な汚水処理を半自然的な人工湿地に代替することが現実的になってきており,自然の機能の活用事例として人工湿地が注目されている。


人工湿地のモデルとなった自然のシステムとその限界を打破したメカニズムについて紹介する。 潮の干満により定期的に底質が露出する干潟は,高い浄化機能を有する環境として知られている。 その浄化の原動力は,干潟底質中の微生物による分解作用である.水面が存在する環境では,大気から水に溶け込む酸素フラックスが微生物による分解作用の制限要因となる。 しかし,干潮時に底質が露出する干潟では,水面を介さず大気から直接的に酸素が供給される時間帯が定期的に存在するため,酸素による制限が緩和される。 そのため,上げ潮による水位上昇時に流入・沈降した有機物や栄養塩類が,下げ潮による水位低下時に分解されるというサイクルがうまく回るのである。 干潮時に底質が露出することが,干潟の高い浄化機能を支えている。 干潮時の干潟と同様に,汚水処理を行う人工湿地においても水面は見当たらない。 これは酸素フラックスが微生物による分解作用の制限とならないように人為的に水面管理を行っているためである。


人工湿地は,60 cm程度のろ過層(砂層またはレキ層)と汚水を流出入する配管で構成され,表層にはヨシ等の湿地性植物が植栽される。 上部に配管された分配パイプから間欠的に流入する汚水は,直ちにろ過層に浸透する。 このため,人工湿地に水があるのは汚水が流入する時だけである。 汚水の汚濁成分は,ろ過層に浸透する過程でろ過作用や吸着作用によりろ過層内に捕捉される。 捕捉された汚濁成分は,ろ材に形成されるバイオフィルムや植物根圏の微生物群により必要な時間をかけて分解される。 汚濁の分解をスムーズに進行させるには,汚濁量に見合った酸素の供給が不可欠である。 人工湿地では水が滞留しないように水面管理を行うことで,汚水の流入時を除けば,ろ過層内は不飽和な状態となっている。 これにより,自然な空気の拡散が妨害されず,ろ過層内へ酸素が供給される。 さらに,ろ過層への汚水の浸透に伴って強制的な空気の吸引が生じるため,汚水の流入時にはろ過層内が完全に換気される。 機器による曝気に依存しない人工湿地での好気的分解は,このような自然に生じる酸素フラックスに支えられている。


汚水処理に必要な人工湿地の広さは,受け入れる汚濁量により決まる。 汚濁の分解に見合った酸素フラックスが得られる表面積が,必要な広さとなる。 汚水の間欠的な流入や水面の適切な管理により,ヒト一人が排出する下水の処理に必要な人工湿地の面積は,わずか2m2前後にまで縮小されている。 つまり一人当たり一畳程度の土地を確保することができれば,下水処理を人工湿地に任せられるところまで技術は確立されている。


屋外の自然条件下で稼動する人工湿地は,季節による環境条件の影響を免れない。 温度が低下する冬季は植物や微生物の活性が低くなり,汚濁の分解作用は低下する。 しかし,物理的作用であるろ過層での汚濁の捕捉作用は冬季においても低下しないため,みかけの水質浄化性能は季節に関わらず継続し,年間を通した汚水処理が可能となっている。 分解作用の低下により,冬季には人工湿地内部に汚濁が蓄積する。 蓄積した汚濁の分解は,温度条件が良好となる春季以降に分解作用が卓越することで完了する。 自然の条件下で稼動する人工湿地における汚濁の捕捉と分解には,このような季節によるタイムラグが生じている。 季節や気候の影響を免れないことは自然を利用した技術の宿命であるが,動的平衡という自然の特性は,定常的に安定した性能が得られることが当然である従来の工学の概念からかけ離れている。 自然の機能を活用することで持続的社会を実現するためには,そのような自然の特性の許容が重要であることは論を待たない。 (中野和典、自然の機能を利用した水質浄化技術、遺伝、Vol.65、No.5、pp.85-86、2011より)


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