日本大学工学部水環境システム研究室
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■ 研究概要

  中小河川の河口状況は多様であり、また、自己流量が少なく外力の影響を受けやすいため河口閉塞
  になりやすい傾向にあります。
  河口閉塞により河川内水位が上昇し、周辺地域に浸水被害を及ぼした例は少なくありませんが、
  その一方で中小河川は大河川に比べてデータ整備遅れており、効果的な河川閉塞対策を確立する
  までには至っていません。
  本研究では、中小河川の河口変動状況を長期的及び短期的に追跡し、河口閉塞のメカニズムの解明
  と、より効果的な対策について検討します。

■ 1.中小河川の河口特性

  岩手県から茨城県に位置する計116河川の調査によると、海岸に対して南側に位置する河川は左岸
  堆積が、北側に位置する河川は右岸堆積が多くみられました。
  また、河口処理については、海岸の端部に位置する河川ほど高い効果が得られています。
  さらに、ここでは「河口変動指標」として、比較的入手しやすい資料によって河口変動の頻度を推定
  する手法を提案しています。

■ 2.夏井・四倉海岸の海浜過程性

  夏井・四倉海岸において、海岸砂の粒径調査及び河口の砂嘴状況調査を実施しました。
  粒径の時系列変化から、海岸の北端では北向き、南端では南向きに、沿岸漂砂の卓越方向が変化
  している様子が伺えます。
  また、海岸内の砂の平均粒径分布から、沿岸漂砂の主な漂砂源は夏井川水系であることがわかり
  ました。
  一方、新舞子ビーチの突提建設による影響を追跡すると、突堤建設後の5年間程度は河口特性が
  不安定となり、その後、回復する様子が見られました。

             

 






■ 3.夏井川の河口閉塞

  夏井・四倉海岸の主な漂砂源となっている夏井川について、水位計、監視カメラ、GPSを使用した
  河口調査を実施しました。
  調査結果を砂村・堀川のCパラメータを用いて分析すると、本海岸における前浜への堆積は、波高0.7
  mから0.8m、波形勾配0.008程度であり、侵食は波高1.6m以上、波形勾配0.014以上の波に
  よってもたらされていることがわかりました。
  2006年9月から11月にかけて長期的な河口閉塞が生じた原因は、高潮位による堆積型の海象条件
 が継続したためと考えられます。

     ≪砂村・堀川のCパラメータ≫
            

 
 


■ 4.効果的な河口処理対策の検討

  (1)開削工について
    夏井川では河口閉塞時の対策として人工開削を行っています。実施時期は不定期であり、河口内
    水位が高く、周辺地域への浸水の危険性があるときに、県の委託業者の判断で行われています。
    福島県の記録によれば1999年から2002年までの間に60回の開削工事が実施されましたが、
    開削が行われても河口内水位が低下しない場合や、開削後数日で閉塞傾向となる場合が見られ
    ました。
    これらの課題を解消するため、現地観測や水理模型実験により開削工が効果的に作用する条件を
    整理し、開削工の実施条件の定量化を図ります。


  (2)導流壁について
    河口閉塞を未然に防止する対策として、導流壁を設置して、河川流の掃流力の増大を図るものが
    あります。
    水理模型実験を実施した結果、導流壁は、その設置位置により得られる効果に差があることが分か
    りました。効果的な導流壁の設置条件について、砂丘堤防の高さや位置との相対関係に着目し研究
    を進めております。

 
 

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